窓下の愛想

「…さん」

声にならない声で

彼女の名前を呼び

ゆっくりと彼女に顔を近づけていく

やがて彼女の目がゆっくりと閉じ

それに安堵感を覚えた僕も目を閉じた

どれほどの時間が経過したのか

ようやく彼女の唇に到達した僕は

ゆっくりと想いを乗せる

彼女の柔らかな温もり

やがて彼女の唇は

重力を失い

小さな空間を作りはじめた

そこからふたりの時間は急激に加速していく

僕は彼女への想いを

彼女の中へ

彼女もそれに答えてくれる



「またドライブしようね」

公休が一緒なのだから

時々なら仕事の振りして

出かけられるよ

と彼女は言ってくれた

元の人気のない無人の駅に着くと

「またね」

そう言って

僕の頬に軽く口づけした彼女は

少し周りを気にしながら

小さく手を振って

自分の車に乗り込んで帰っていった

その夜

再び僕の心を激しい高鳴りが襲ったが

安らぎに似た温もりも感じていた

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