窓下の愛想
まともな返事が出来なかった僕は
「ちょっと待ってて」
一言だけ言って
ふたりきりだった喫煙室を出た
急いでロッカールームまで行き
自分の携帯を手に取った僕は
すぐに引き返し
メアドの表示画面を出すと
「はい」
と、それを彼女に渡した
「ありがと」
満面の笑顔で携帯を受け取った彼女に
僕は見とれていた
性格がきつめの彼女が
これほどの笑顔を見せることは
滅多にない
だからこそ僕は
彼女の笑顔が大好きだった
「登録しちゃった」
しばらく必至な表情で
ふたつの携帯を手にしていた彼女は
再び僕の大好きな笑顔を浮かべて
はい、と、携帯を僕に返してよこした
「そっちのも教えろよ」
「後でメールするよ」
彼女は悪戯に笑った
この日のやり取りは一生忘れない
こんなにも彼女の笑顔を堪能出来たのは
この日が初めてだったから