秘- himitsu -密
第1章 恋は唐突
誰かが私の名前を
呼んでいる。
小さく囁く声。
あなたは、誰ですか。
どこにいるんですか。
真っ白の世界の中で
ただ知らない声だけが聞こえる。
―山瀬さん―
ハッと気づいた時には
もう遅くて。
頭に軽い痛みが走って
目が覚めた。
「93ページ、問6」
数学担当の高平が
隣で私を見下す。
慌ててノートを見るけど
ぐっちゃぐちゃで
何を書いていたのかすらわからない。
かろうじて読んだのは
最後の行の答えらしい文字。
「この命題は真である」
「その章は終わったぞ」
「え」
ギャーギャーと
クラス中に笑われてる私、
恥ずかしすぎる…。