西の塔に酉
 自室に向かい、廊下を、スタスタと歩くロヴィーサをケヴィンは追いかける。

「ロヴィ!」

 無視して歩き続けるロヴィーサの腕を掴んだ。

「ロヴィ! 嫁ぐって……ラディナ大国の国王に!? 彼にはもうすでに妃が――」

「4人。さらにたくさんの側室がいるそうね」

「ロヴィ……なにも二つ返事でわざわざそんなところへ……」

「冷静になって、ケヴィン」ロヴィーサの眼差しは強い。「そういう問題じゃない。ラディナ大国の進軍の中継点にここアムニールがある以上、私達に選択肢はない」

 違う? と、ロヴィーサは唇を噛んだ。

「それに、二つ返事でなければいけない。ラディナのご機嫌を損ねてみなさい、象が蟻を蹴散らすように、アムニールのみんなは――」ロヴィーサは、ふう、と息をひとつ吐く。「それが私の身ひとつでみんなの安全が保障されるのなら安いものだわ」

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