西の塔に酉
「ロヴィはそのお心こそ美しいということです」

「おだててもなにもでないわよ。この通り我が国は、求婚の献上品でやっと食いつないでいるほど貧しくてね」

「しかも、献上品を抱えた列者の滞在費で国の経済が回っているほど」

 苦笑いしながら、ぷちぷちと草をむしるロヴィーサに、ケヴィンは続ける。

「世にも美しき王女がお育てになっているお野菜が、我が国の生産の一端をになっている始末です」

「参ったわ」ふふ、とロヴィーサが楽しそうに笑う。「ますますお嫁にいけないじゃない。いき遅れたら、ケヴィン、宰相の責任で私をもらうのよ」

 手についた土をはらって立ち上がるロヴィーサを見上げて、ケヴィンは底なしの柔らかさで微笑んだ。

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