西の塔に酉
「察するに――」ケヴィンは気を取り直して、きつく目を細める。「――ロヴィーサ王女への求婚かと。しかし、ラディナ大国には現在、相応しい殿下はおわしますまい」

「いかにも」

「では、一体、どのような要件であのような献上品を……」

 アロワと名乗った使者はにこりと微笑んだ。

「国王陛下にお目通りかなうための、単なる目くらましでございます」

「な……!」

 ケヴィンは絶句する。国王はすでに聞いていたのか、ただ、ため息をついて目頭を揉む。

「そ、それは一体どういう……」

「ご安心なさいませ。我らが従えてきた財宝は、すべてラディナ王室お墨付きの価値ある品々でございます。しかしながら、それらは献上品ではございません。前金にて」

「前金……だと……?」

「アムーニアという国をいただくための」

「アムーニアを買収するというのか!」

 声を荒げるケヴィンをアロワは、小さく鼻で笑う。

「感謝はされても、文句を言われる筋合いはないというものです。
我が王はおうせでした。『いくら領土が欲しくとも、美しきヴィローサ姫のおわす国を打ち滅ぼすのは忍びない』と」
< 9 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop