Vrai Amour~美空の場合~
「美空・・・」

懐かしい、甘い低い声が耳元で響く。

「・・・赤ちゃん、の前にすることあるだろ?」

先生は私を軽々と抱き上げると、視線を合わせふわりと微笑んだ。

「・・・愛してる。僕と結婚してください」

その響きが凍りついた心を一気に溶かす。

私の返事はもちろん決まってる。

「・・・はい」

返事とともに重なる唇。

花婿と違う男とウェディングドレス姿の新婦。

お屋敷に向かう今日の参列者は道端で繰り広げられたプロポーズに目を見開いて驚いている。

だけど、私たちは振り向かない。

「行こう」

先生はするりと私の左手の薬指に指輪をはめると、近くでタクシーを拾った。
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