男友達
「ねえ、卓也、起きてる?」
「なんだよ。」
「何なの?これ。」
「何って…。」
薄暗い部屋のベッドの中いる。
何が起きたのか、よくわからない。頭が回転しない。
でも、その最中、私はきっと泣いていた。
嬉しかったから。
ずっと、こうしたかったのかもしれない。
「友達」って言い聞かすことで、無理やり自分の気持ちを抑えてたのかもしれ
ない。
卓也はどうなんだろう?
結果、こうなってはいるものの、前後の記憶が曖昧で思い出せない。
こうなった以上、ハッキリさせとかないと後々、友達関係にすらもひびが入る
かもしれない。
「ねえ。…。」
そう言いかけると、たたみかけるように卓也が言った。
「お前の事、好きだよ。一応、女として。」
「一応って何よ?」
「いや、だから、友達としてじゃなくてってこと。」
「…。」
「今日さ、ってか、前々からちょっと感じてはいたんだけど、お前の事、好き
なんだなって。離しつけに行ってくれた時にも思ったし、会社の後輩とかいうペ
ーペーに取られかもしれないって思ったら、いてもたってもいられなかった。」
「うん…。」
嬉しくて言葉にならない。
「何でもっと早く気が付かなかったんだろうな。今までも彼氏がいたり、彼
女がいたりしてたのにな。で、お前はどうなんだよ、眞子。」
「!」
初めて名前を呼んでくれた。ずっと「お前」だったのに。
「私も同じ気持ちだよ。なんか変だね、もう10年も経つのに、今更って思うけ
ど、年々、卓也がいてくれる安心感とか、友達以上の気持ちが増えた。」
私は、色んな話をしているうちに、うん、うんと何度かうなずいて、知らぬ間
に眠ってしまった。
夢なのか現実なのか、そっとほっぺたに触れるひんやりした手の感触を覚えて
いる。