男友達
いつものこと
卓也とは10年来の男友達。唯一の男友達。
時々、こうして終電がなくなるまで遊んではうちに来る。
だいたい、私が一人暮らしを始めようと相談した時、進んで物件を探してきて
くれた卓也。いつになく親身になって一生懸命探してくれたもんで、ちょっと勘
違いしかけたくらいだ。
でも、実際は自分の行きつけのお店から歩いていける距離の物件だった。
人をなんだと思ってるのか。彼氏がいる時期はさすがに来ないけど、ここ数年
独り身になってからは、週に一回は夜中にああしてやってくる。
勝手極まりないやつだけど、男も女も友達は多い。誰の話でも親身になって聞
いてくれる卓也をみんな憎めないのだ。
私もよく相談する。男はすぐに解決策を見つけたがるが、卓也は本当に、うん
うんって聞いてくれるだで、そして本気で落ち込んでるときは、コンビニでチョ
コレートをひとつ、買ってきてくれる(笑)
まるで子ども扱いだけど、それも心地よかった。
仕事がもうすぐ片付くってところで、メールが入る。
卓也からだ。
《 昨日はサンキュー。あ、今日か。冷蔵庫の中のパンは食っといた。
帰るわ。鍵、郵便受けに入れとくな。また、連絡する。飯、おごるし。》
左上がりのくせのある文字。
「はいはい。」
小声でつぶやくと、一気に仕事を片付けた。
1週間後、また真夜中にインターホンが鳴る。
まただ。年末ということもあってか、最近頻繁に出歩いているようだ。
彼女でも作って、そこに行けばいいのに。
しつこくインターホンが鳴っている。
上着を羽織って鍵を開けて、鍵を閉めて、翌朝にはそこいらじゅうにごみが散
乱する。
まあ、いいか。
いつものことだ。