テノヒラノネツ
「……懐かしいな……」
「古賀君のうちにも、ツリーはもうないの?」
「ああ。かなり前に処分したんだろうな」
「子供がいないと、もっとシンプルにすますよね。小さな置き物とかね」
「そうだな」
「兄貴の子供が生まれて、それで浮き足立ってるのよ……買ってくるのはいいけれど、誰が飾るの?」
「千華だろ?」
「やっぱりそう思う?」
千華は溜息をつく。
なんとなく、彼と会話してても、先週より構えていない自分に気がついた。
だからかもしれない。
少し自虐的な質問をしてみた。
「彼女は?」
「?」
「彼女はもう飾ったの? クリスマスツリー」
「……千華はどうした?」
「飾ってない…邪魔なだけだし。あ、そうそう。ちゃんとプレゼント選べた?」
「まだ」
「ひどーい、つめたーい。だめじゃん」
「まだ付き合ってないしな。俺でいいのかもわからないし……リサーチしてみたけれど、はっきりしない」
「えー信じられない。古賀君ならOKでしょ? NG出す女がいたら見てみたいわ」
「仕方ないだろう。問題外みたいな態度を取られているんだから」
それこそどんな彼女よ? と千華は思う。
周囲が注目するし、知名度も高すぎるから、公言することはないけれど、自慢の幼馴染なのだ。
その彼を、問題外とするような態度の女性がいるはずもない。
一人でブツブツ呟いてると、実家につく。
彼が押すドアチャイムで現実に戻された。
「あ、ごめん、古賀君、こんな玄関先まで持ってもらっちゃって…ありが……」
とう。と、云い終わらないうちにドアが開いて、母親が顔をほころばせる。
「千華、あら、祐樹君まで! なーに、千華ったら祐樹君に荷物持たせて」
あがってお茶でも飲んでってと、古賀を家の中に引っ張り込んだ。
「あ、2人とも、手洗て、うがいしてね」
古賀はまるで小学生に戻ったようだなと呟く。
「ごめん。原因はすぐにわかるよ」
「?」