テノヒラノネツ
「もしもし」
「千華! 繋がった! あたし11時以降何回も電話してたんだよ?」

ものすごいテンションで切り出される友人の声に千華は首をすくめる。

「ごめん月末〆で忙しくてさ」
「まあいいわ、メール着た?」
「うん……着た」
「行くでしょ?」
「うーん……」
「何よ、アンタらしくないわよ」
「そうなんですが……」
「何故いきなり敬語よ」
「いやいや、有名人も出席なんでしょ? 緊張しちゃう」
「アンタ、それイヤミ?」
「いや、正直なところ、なんか気まずいよーな……でも、会いたいよ―な」

いつも思う。
この集まりで彼に逢う時は……。
小さな頃の思い出と、学生時代の思い出が交差して―――……。
社会人となった今ではなんともいえない気不味さがある。

「え、めっずらし、自覚した? 『会いたい』なんて」
「訂正。『ちょっと離れて遠くから見てみたいようーな』ってところ」

こだわってるのは千華だけで、彼はなんとも思っていないのかもしれない。
そのはずだ。
だって高校の時だって。いや、中学の頃からか、千華は彼と距離を感じるようになっていたのだから。

「古賀君は変わらないんじゃない? だってあんた、今日発売のL-COOLのインタビュー記事読んだ?」
「さっきちらっとね」
「もう、堅い! 堅いったらないわ、あー何度読んでも困惑するインタヴュアーが想像できて笑えるわ」

そういう見方もあるのかと千華は思う。

「相変わらず綺麗な顔してるよね、彼は……アンタ実家からも何も連絡ないの? 近所なんでしょ?」
「ないよ。実家には、あまり連絡入れないしね」
「なんで?」
「連絡入れると、うるさいのよ」
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