テノヒラノネツ
「ありがとうございます。リングのおサイズのほうは……?」
店員はリングサイズを測るリングゲージ片手に、営業用スマイルで 千華を見る。
「ちょ、ほら、指輪はまずいって、私のサイズに合わせても、相手に合わないじゃ、話しにならないわよ?」
「サイズ直しは後日でも承ります」
「彼女のサイズで」
千華は古賀にホラと背中を押される。
ゲージで素早くサイズを測られる。
「お客様、指細いですね」
「いや、その……じゃあ中指サイズで」
もしも彼女の指がもっと大きめのサイズだったら……と気を使う。
「いえ、薬指で結構です」
千華の背後で彼が云う。
千華はびっくりして古賀を見上げる。
店員は千華の中指から薬指へとゲージを変えて計り直した。
「はい。それでも6号ですから……在庫確認してまいります」
店員が千華から離れる。
「在庫ございました。お支払いは?」
古賀がカードを出し支払いを済ませる。
「お名前入れますか? でしたら今ちょっと混んでまして、クリスマスには間に合いますが、少々お時間かかります」
「じゃあ、お願いします」
「ではこちらに、スペルをご記入下さい。ただお客様のサイズですと、あまり長い文字は入りませんので御了承くださいませ」
彼は差し出された用紙に左手で書きこむ。
「千華、ちょっと確認してくれ」
「?」
何故ここで彼女の名前を確認しなければならないのか?
千華自身は彼女の名前なんて知らないのに……。
千華は差し出された用紙を見て、動きが止まる。
「……合ってる?」
「合ってる……え? でも、それ、私のスペル……え?」
「合ってるそうです」
「では先にこちら、ネックレスの方、お包み致しました。中に保証書がございますので……」
古賀は千華に、ブランドのロゴが入った小さな紙袋を渡す。
「ではこちらで承りました。後日御連絡致します。お買い上げ有難うございました。」
(…………)