君のこと。
学校に入ると、まず担任の杉田に会った。
「杉田先生」
「おはよう、楠」
「おはようございます」
ぺこりと軽い会釈をする。と
「あれ、海原」
「ちす」
「かい、はら?」
「俺だよ俺」
彼はどうやら、海原という名字らしい。
「なんだ、お前たち。もしかして付き合ってたのか」
「まさか。今、校門で会っただけで」
私が愛想笑いをしながら返答する。海原くんを見ると、何故だか少し頬を赤らめていた。
「じゃあ、これで」
「おう。頑張れよー」
杉田のどこか力の抜けた応援を受け、私は職員室前の廊下をあとにした。
「えっと・・・海原、くん」
「海原空」
「海原くん、二階のどこに用事があったの?」
「保健室」
「そっか。じゃあ、私はここで」
そして、私たちは背中を向けて逆方向に歩き出した。
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