君のこと。
「立花ー大丈夫か、立花?」
廊下でたまたま会った杉田を呼ぶと、彼はそのままついて来てくれた。
「友美。起きてよ、今日は大事な日なんだよ?」
「ん・・・ゆず?」
ぱちりと重い瞼を開く。一度友美は目をこすると、そのまま起き上がった。
「おはよう。・・・平気?」
「うん。大丈夫」
「そっか、よかった」
にこりを返事を返す。
「空」
「・・・友美」
「ありがとう」
「いや」
そういうと、海原くんは保健室から出て行ってしまった。
なんだか、友美に接する海原くんの表情や仕草は、すごく繊細ですこしでも触ったら崩れてしまいそうな、そんな感じがした。
「海原くん、優しいね」
「そうだね」



それから、私と友美は部室に戻り作業を始めた。そのころには部員も集まっており、みんなで和気藹々とした雰囲気を味わっていた。
みんなで相談した結果、友美の書く字は「純」、私の書く字は「幸」と決まった。結局、自分の好きな漢字ではないのだが、考えるのも面倒なのでそのまま促した。
時折彼のことが頭に浮かぶが、その感情がなんなのかは私にはわかっていなかった。ただ思うのは、「可愛い男の子」ということ。あとひとつは、「意外な一面を持つ、素敵な男の子」ということだった。なぜだか彼といたときは時がすぎるのが早く感じたし、何より楽しかった。ただそれだけだった。その時間は、とてもとても、幸せだった。私は、幸せがすきだった。みんなと同じように。
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