悪女の恋〜偽りの結婚〜
 現にマンションの家賃は社長に出してもらっている。俺の安月給じゃ払えねえから当然だけどな。


「ところで、ハネムーンはどうだった? よかったか?」


「あ、ああ。やはりローマはよかったぞ。なんて言うかさ、街中が世界遺産なんだよな。日本とは歴史の重みが違うっつうかさ……」


「いや、そっちじゃなくて、花嫁のお嬢様との、あっちの方だよ」


「ああ、そっちね……」


 俺はローマの最初の夜、つまり初夜の晩の、俺に背を向けてシクシク泣いてた結衣を思い出し、嫌な気分になった。そう言えば、あれから結衣を抱いてないんだよな……


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