悪女の恋〜偽りの結婚〜
 風呂に入り、パンツ一丁の格好でベッドに座り、俺は携帯を手に迷っていた。結衣にメールをするかどうかを。


 結婚して以来、俺は毎日定時で会社を上がり、真っ直ぐマンションに帰っていた。だから結衣は、そういうものだと思っているに違いない。


 サラリーマンには残業というものがあり、帰りが遅くなる事があるという事を、世間知らずのお嬢様は、たぶん知らないだろう。


 今頃は俺を心配してるだろう。


 いや、待てよ。だったら向こうからメールなり電話をすればいいじゃねえか……


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