悪女の恋〜偽りの結婚〜

「孝司は奥さんと離婚するんだよね？」


「ああ、そのつもりだけど？」


「奥さんは浮気してるのよね？」


「あ、ああ」


　そう言われた時、俺の胸がチクッと痛んだ気がした。


「だったら、奥さん、っていうか、奥さんの実家から、がっぽり慰謝料を貰いましょうよ？」


「なんで？」


　慰謝料を貰う、なんて発想は俺には全くなかったし、“貰いましょうよ”という言い方も気になった。“貰いなさいよ”の間違いじゃないのか？


「当然でしょ？ 浮気した奥さんが悪いんだから。すごいお金持ちなんでしょ？ 奥さんの実家って。何千万円も貰えそうじゃない？ もしかすると、口止め料込みで一億円ぐらい貰えたりして？ きゃあ、どうしましょう！」