悪女の恋〜偽りの結婚〜
「何を作ってくれたの?」


「ビーフカレーです」


「カレーかあ……」


「あ、今度は大丈夫だと思います」


 結衣は、伏し目がちに小さな声でそう言った。というのは、前にも一度カレーを作ったのだが、水っぽいし、ジャガイモはガリガリに固くて、お世辞にも美味いと言える代物ではなかったから。


「そう? 明日の朝食べさせてもらうよ。カレーは温め直しが美味いんだ」


「そうなんですか?」


「そうさ」


「孝司さん……?」


「ん?」


「今夜の孝司さん、どうしてそんなに優しいんですか?」


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