悪女の恋〜偽りの結婚〜
 結衣は、大きな目で俺を見つめてそう言った。不思議そうな、ちょっと警戒しているような表情だ。


 それは尤もな事だと思う。今までの俺は、いつも結衣に小言を言ったり、怒鳴り付けてばかりだったのだから。


「今が優しいんじゃなくて、今までが結衣にきつくし過ぎだったんだよ。ごめんな。俺、おまえの事、ずっと恨んでたんだ」


「私があんな事したから? 孝司さんを酔わせて……」


「そうさ」


「あの時は、ごめんなさい」


「え?」


 結衣があの事を謝るとは、思ってもみなかった。ま、普通の人間なら謝って当然なんだが、結衣は今までずっと、謝るどころか話題にもしなかったから。


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