悪女の恋〜偽りの結婚〜
 その夜、結衣は俺に抱かれながら、涙を流していた。


 「なぜ泣くんだ?」と聞いたら、「孝司さんが優しくしてくれて、嬉しくて……」と結衣は言った。


 それを聞いて、俺の目からも涙が出てしまった。


 だが、俺のは嬉し涙ではなく、悲しみの涙だった。

 好きだと気付いた女を、その直後に手放さなければならない自分の運命を、俺は恨んだ。自ら招いた運命ではあるのだが。


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