悪女の恋〜偽りの結婚〜
 帰宅してマンションのドアを開けながら、俺はふと思った。結衣は家に居るだろうかと。


 結衣は俺に惚れたらしいが、ずっと冷たい仕打ちをしている俺に対し、嫌気が差してやしないだろうか。むしろそれが当然なはずだ。早々に実家に逃げ帰ってはいないだろうか……


 しかし、結衣は家にいた。ドアを開閉した音に気付いたらしく、玄関まで俺を出迎えに来た。無理に笑おうとしているらしく、引きつった顔で。


 俺は呆れながらもホッとしていた。と言っても、結衣がまだいて嬉しい、という事ではもちろんない。逃げられたのでは、こいつに復讐出来ないからだ。一度泣かせたぐらいではまだ足りない。もっともっと追い詰めなければ……


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