悪女の恋〜偽りの結婚〜
 何だ、これは……


 テーブルの上にはスープやサラダやパン、それにロースト・ビーフやキャビアやらが所狭しに並んでいた。しかもご丁寧にシャンパンまで!


 何処かのレストランにケータリングを頼んだのは明らかだ。


 俺は呆れ返り、結衣を怒鳴り付けようと思ったが、寸前でそれを堪えた。


 今日だけは我慢してやろう。今まで結衣に辛く当たり過ぎたからな。もし俺が怒鳴り付けて、実家に逃げ帰られては面倒な事になる。


 いずれはそうなるだろうが、今はまだ早い。もっとコイツを虐めてからでないと……


 今夜は新居の初日という事で、その祝いと思えばいい。結衣もそういう考えかもしれないしな。


 そう自分に言い聞かせ、俺はシャンパングラスを掲げてみせ、料理を口に運んだ。少し冷めてはいたが、旨かった。当たり前だが。


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