悪女の恋〜偽りの結婚〜
 一条グループの会長でもある社長の一人娘の夫となった俺は、一条グループの後継者となっても何ら不思議はないだろう。俺にその気があれば。


 ところが、俺は社長からの昇進の申し出を断った。その事を一条海は聞き付け、早速俺の真意を聞きに来たに違いない。


 もし俺にその気が無ければ、社長の甥の一条海が、一条グループの後継者になるだろうから。ところが、


「地位? 何の事ですか?」と一条海は言った。なおも惚けるつもりか?


「俺が社長からの昇進の申し出を断った事を貴方は聞き付け、俺の真意を確かめに来たんでしょ? 惚けないでくださいよ」


 俺はイライラし、語気を荒げてそう言った。


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