悪女の恋〜偽りの結婚〜
「まあ、それもあります」一条海はしれっとした顔で言った。その落ち着き払った態度に、俺はますますイラついた。


「だから、俺は社長だの会長だのには全く興味がない。貴方は安心していいって事さ。では……」


 そう吐き捨てて俺が席を立とうとしたら、「待ちなさい」と言われた。


「はあ? まだ何か……?」


「貴方は勘違いしているようだ」


「勘違い?」


「そうです。私は貴方が地位に興味があろうがなかろうが、それこそ興味がない。私が知りたいのは……」


 そこで一条海は言葉を切り、鋭い目で俺を睨み付けた。この目だ。俺が何度か結衣の親戚と会った時、一条海はこんな目で俺を見ていた。思わず背筋がゾクッとした。


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