悪女の恋〜偽りの結婚〜
 キッチンに結衣を連れて行き、さあ飯を作れと言ったのだが、結衣は何をどうすればいいのか、全く分からないようだった。


 料理ぐらいした事あるだろと聞いたら、ないと言いやがった。ただの1回も。


 まったく呆れたもんだ。社員に偉そうに訓示をたれる社長だが、娘の教育はてんで出来てねえじゃねえか!


 今から朝飯の作り方を教えるのは面倒だし時間もないから、コーヒーだけ入れさせようと思った。しかし、案の定それすらした事がないと言う。コーヒーの入れ方ぐらいは覚えさせたいから、仕方なく俺は懇切丁寧にそれを教えてやった。


 結衣は俺の説明を真剣な顔で頷き、聞いていた。余程のバカでもない限り覚えただろう。


 そして昨夜言った通り、俺は結衣に千円札を2枚渡し、これで晩飯を用意しろと言って家を出た。


 これであいつも少しは金の大切さが分かるだろう。2千円を持って途方に暮れる結衣を想像し、これはいい虐めになるなと、俺はほくそ笑むのだった。


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