悪女の恋〜偽りの結婚〜
 それはフランス土産のチョコレートだと結衣は言った。どうやら結衣は、それを俺に食わせたくて、わざわざここまで来たらしい。


 チョコレートには紅茶かなと思い、俺は二人分の紅茶を入れて畳の上に座った。結衣と向かい合わせに。


 結衣は白く細い指先でラッピングを解き、早速食べましょうと言った。俺は実は甘党で、チョコレートは大好きだった。


 早速一つを口に入れると、いかにも高級な香と味がした。そしてカリッとかじると、中からトロッとした液体が溢れ、口の中一杯に独特な香が広がった。

 酒か!?

 とっさに口から出そうとして結衣にそれを止められた。何でもコニャックの香と味がするが、アルコールは殆ど含まれていないと言う。結衣も平気な顔で食べているし、子供に食べさせても大丈夫らしい。

 とても辛いが、チョコレートの甘さとあいまり、旨いかもしれないと俺は思った。


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