悪女の恋〜偽りの結婚〜
 女を連れて喫茶店に引き返したら、昨日、支払いの事で俺に文句を言ったウェイターが通りに出て、腕組みしてこっちを見ていた。何も言われはしなかったが、さも“困ったお客さんだ”と言いたげな顔をしていた。


 さっきまで座っていた窓際の席に女と座ると、すぐにウェイトレスが来て、女と俺はホットコヒーを注文した。


 テーブルには既に俺が飲んでいた水の入ったグラスと空のコーヒーカップがあり、俺がこの席に座っていた事に女は気付いた様子だったので、


「私はここで見張ってたんですよ、昨日も」

 と正直に話した。すると女は驚いた顔をし、


「あなたは探偵さんですか?」


 と言った。


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