悪女の恋〜偽りの結婚〜
 俺がそう説明すると、中山さんは驚きと共に、はっきりと同情の目で俺を見て、「そうだったんですか……」と言った。


 それが惨めというか悔しくて、“あんな女なんか愛してもいないし、浮気しようが何をしようが、本当はどうでもいいんですけどね”と付け足したかったが、話がややこしくなるので、それは我慢する事にした。


 続いて中山さんは、

「彼と私は、同じ家に住んでいます」

 と言った。

 それを聞き、一瞬夫婦か、あるいは兄弟かと思ったが、それにしては言い方が違う気がした。


「と言いますと……?」


「彼は私の家に下宿してるんです」


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