悪女の恋〜偽りの結婚〜
 そう考えると、そんな男に引っ掛かる結衣は、本当のバカだなと思った。


 結衣のバカヤロウ……


「あの……」


 中山さんの声で、俺は我に返り顔を上げた。


「私が何とかします」


「はい?」


 中山さんの言葉の意味がすぐには解らず、俺はそう聞き返していた。


「彼と奥様との、その……交際、やめさせるようにしますから、どうか気を落とさないでください」


 中山さんは沈痛な表情で俺にそう言った。俺はそんなに落胆してるように見えるのだろうか……


「はあ」


 俺はどう返事をすればいいのか分からず、そんな気の抜けた声しか出なかった。


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