悪女の恋〜偽りの結婚〜
「あの時はすまなかった」


 ウェイターに料理を注文すると、俺は遥に向かってそう言って頭を下げた。


「もういいよ。過ぎた事だもん」


 遥から意外な言葉が返って来た。しかし俺は過ぎた事として済ますのではなく、ちゃんと誤解を解きたかった。


「あれは誤解なんだ。結衣……という悪女が、俺にコニャック入りのチョコを騙して食わせ、俺を酔わせてあんな芝居をしやがったんだ」


「あ、そうだったんだ……」


「携帯のメールに返事したのも俺じゃない。あの女なんだ。わざと遥に見せるために」


「あたしもあれは変だったなって、後から思った。孝司があたしに敬語使うわけないもんね?」


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