悪女の恋〜偽りの結婚〜
「あの時の結衣っていう女と、俺は結婚したんだ」


 遥の顔は、驚いた顔から見る見る怒りの形相へと変わっていった。


「な、何でそれを早く言わないのよ! バカみたい。帰る!」


「ちょっと待ってくれ!」


 俺は立ち上がり掛けた遥を慌てて止めていた。俺が結衣と結婚した理由をきちんと説明したかったから。すぐに他の男と付き合った遥とは、違うのだと言いたくて。


「なによ?」


「ちゃんと訳があるんだ。頼むから座って俺の話を聞いてくれ」


 俺がそう言うと、渋々という感じで遥は座り直した。俺は遥に、結衣と結婚するまでの経緯を説明した。


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