仕事上手(?)で恋愛下手(!)
相川さんの顔は確かに
腫れ上がっていたけど、
目や鼻など大事な部分からは
少し外れていた。

「良かったって…。
適当なこと言わないでっ!」

相川さんは強い口調で吐き捨てるように言ったけど、
それは今にも泣き出してしまいそうな
程に苦しい表情をしていた。


(怒鳴られたって、怒られてたって、
怯まない。

彼女を守りたい気持ちは伝えなきゃ。
味方がいることを感じてほしい…。)

私は彼女を真っ直ぐに見つめて、

「相川さん。私あなたが何か
辛い思いをしているなら
力になりたいと思ってます。

相川さんよりずっと年下で頼りないと
お思いになるかもしれませんが、

気が向いた時にお話して
頂けませんか?」

私は名刺を渡した。

「あとは病棟ナースに西村呼んでって言ってもらえればすぐ来ます。」

そう言って、彼女の傍を離れようと
すると、

「どうして、何も聞かないの?
誰にやられたんだって。
どんな旦那なんだって?」

相川さんは驚いたような表情を
していた。

「私たち医療相談員の仕事は、詮索することではありません。

自分を傷つけてまで話さなくても良いと私は思ってます。

傷が少し癒えて、話しても良いと
お思いになったらお話し下さい。

ご連絡待ってますので。」

そう言って相川さんの顔を見ると、
彼女は静かに涙を流していた。
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