仕事上手(?)で恋愛下手(!)
気が付くと私は自分から彼に唇を
重ねようとしていた。
自分でも大胆な行動だったと思う。

でも、あんな陽希君の表情を見てそのままに
しておくことはできなかった。

陽希君の部屋に光は無かった。
求めるままに応えていた。そんな状態だった。

「花菜さんと一緒に飲んでいた人が上司だって
由紀さんに教えてもらっても嫌だった。
花菜さんが男と二人でいるのを見るのが
嫌だったんだ。」

吐きだすように言う彼をただただ抱きしめるしか
できなかった。

消えそうな位に細い三日月が
うっすらとカーテンの隙間から見えて
私はそれを眺めていた。

(答えを出さなくちゃいけない。
いつまでもこのままではいられない…。)

漠然とした思いを抱いていた。

「花菜さん。
俺の方を向いて、俺だけを見ていて。」

その日の陽希君は何かの衝動に駆られたように私を抱いた。
私が泣いても、もう止めてと言っても
聞き入れてはくれなかった。
< 211 / 365 >

この作品をシェア

pagetop