仕事上手(?)で恋愛下手(!)
そこから陽希君はポツポツとこれまでに
経験した壮絶な体験をオブラートに包みながら
話してくれた。

「ほら、一時期硫化水素を使った自殺が流行ったでしょ。
あれなんてもう最悪ね。俺らもガスマスクして
現場に入んなきゃいけないし…。

普通の首つりも見てきたけどあんまり見るもんじゃ
ないよね。

あんな経験、絶対に花菜さんにさせたくないよ。」

陽希君は何度も『私に見せたくない』と繰り返し言ってくれた。
きっと、その真意にはきっとこれまで経験した
辛すぎる位にツライ経験が元なんだろうと思った。


陽希君の仕事は本当にキレイなことなんて何一つない。
常に最前線の命の現場で戦っている。
シビアな世界にいるのだと改めて感じた。

なんて話し込んでいると
いつの間に片付けは終わっていて
台所で白ワインの瓶を開けて二人で
立ち飲みをしていた。

< 261 / 365 >

この作品をシェア

pagetop