悪女
「紫恵ー」
高い声が廊下に響く。紫恵の友人の蝉川がパックジュースを2つ抱えて廊下の一番はしにいる俺たちに走ってきた。
「空!」
紫恵は嬉しそうに下敷きで俺を扇ぎながら蝉川の名前を呼んだ。
「あ、霧原君もいたんだ。ジュース二つしか持ってきてないや。」
「ジュース?」
俺と紫恵は一緒に声を上げた。
「天が差し入れだって。」
「へー、天先生なかなかいいことする~」
紫恵が笑った。
俺を扇いでいた下敷きはいつの間にか床においてあった。
「わたしもう一個貰ってくるね!」
俺にジュースを渡すと教室へ向かって蝉川は走り出した。