悪女



「紫恵ー」

高い声が廊下に響く。紫恵の友人の蝉川がパックジュースを2つ抱えて廊下の一番はしにいる俺たちに走ってきた。

「空!」

紫恵は嬉しそうに下敷きで俺を扇ぎながら蝉川の名前を呼んだ。

「あ、霧原君もいたんだ。ジュース二つしか持ってきてないや。」

「ジュース?」

俺と紫恵は一緒に声を上げた。

「天が差し入れだって。」

「へー、天先生なかなかいいことする~」

紫恵が笑った。
俺を扇いでいた下敷きはいつの間にか床においてあった。

「わたしもう一個貰ってくるね!」

俺にジュースを渡すと教室へ向かって蝉川は走り出した。
< 8 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop