【短編】message
部屋の外は、僕の予想を裏切ることのない猛暑だった。
それに負けじと蝉がミンミン鳴き叫んでいる。
鉄板のような熱さの道路を、サンダルで踏みしめるたびに足の裏に焼き目がついている気さえした。
彼女のいる路地は、相変わらず程よい気温を保っていた。
「ここだけ別世界だな。」
思わず僕は呟いた。
『さがしてくれるの?』
さっそく彼女のお出ましのようだ。
電柱のあたりから『声』が聞こえた気がした。
僕はそのあたりまで近寄っていった。
今度は秘策を考えていたのだ。
携帯電話をとりだし、耳にあてる。
「あぁ、そのつもり。君の名前を教えてよ?」
こうして話せば生身の人間からは、おかしな人には見えないっていうわけだ。
『ミナ・・・。アサイ・・・ミナ』
「ミナちゃんか。いつからここにいるの?」
『わからない。ここから出れないの。』
「じゃあ、何をさがしているの?」
『わからない。思い出せないよ・・・。』
「思い出せることだけでいいから、お兄ちゃんに教えてくるかな?」
『ミナ、お家に帰るところだったの。でも、大事なものなくしちゃったから帰れない・・・。誰もミナに気づいてくれなくて・・・』
か細い声になるミナ。
「そうか。寂しかったね。」
鼻をすする音とヒクヒクと小さな嗚咽が聞こえ、ミナは泣き出していた。
幽霊とはいえ、女の子を泣かすのは僕のポリシーに反する。
「もう大丈夫。大丈夫だから。」
携帯電話を片手に必死に声をかけるけれど、僕には彼女を抱きしめることも、頭をなでて慰めることもできない。
姿が見えないというもどかしさを改めて実感する。
それに負けじと蝉がミンミン鳴き叫んでいる。
鉄板のような熱さの道路を、サンダルで踏みしめるたびに足の裏に焼き目がついている気さえした。
彼女のいる路地は、相変わらず程よい気温を保っていた。
「ここだけ別世界だな。」
思わず僕は呟いた。
『さがしてくれるの?』
さっそく彼女のお出ましのようだ。
電柱のあたりから『声』が聞こえた気がした。
僕はそのあたりまで近寄っていった。
今度は秘策を考えていたのだ。
携帯電話をとりだし、耳にあてる。
「あぁ、そのつもり。君の名前を教えてよ?」
こうして話せば生身の人間からは、おかしな人には見えないっていうわけだ。
『ミナ・・・。アサイ・・・ミナ』
「ミナちゃんか。いつからここにいるの?」
『わからない。ここから出れないの。』
「じゃあ、何をさがしているの?」
『わからない。思い出せないよ・・・。』
「思い出せることだけでいいから、お兄ちゃんに教えてくるかな?」
『ミナ、お家に帰るところだったの。でも、大事なものなくしちゃったから帰れない・・・。誰もミナに気づいてくれなくて・・・』
か細い声になるミナ。
「そうか。寂しかったね。」
鼻をすする音とヒクヒクと小さな嗚咽が聞こえ、ミナは泣き出していた。
幽霊とはいえ、女の子を泣かすのは僕のポリシーに反する。
「もう大丈夫。大丈夫だから。」
携帯電話を片手に必死に声をかけるけれど、僕には彼女を抱きしめることも、頭をなでて慰めることもできない。
姿が見えないというもどかしさを改めて実感する。