【短編】message
過去の新聞の死亡欄から、ミナを探そうと考えたのは名案のはずだった。

だが、書庫の膨大な量の新聞を目の前にして、僕のやる気はすっかり削ぎとられていた。

「どこから手をつけよう。」

ため息交じりで呟いた僕は、その場に立ち尽くしたまま頭を悩ませていた。

パソコンの検索システムでは、記事の内容までは探せない。

ミナがいつの時代に生きていたのか、それさえ絞れればもう少し簡単にいったのに。

いつまでも立っていては他の利用者の迷惑になる。
とりあえず、今日の朝刊を手にとってすぐそばの席に座った。

休日ということもあり、館内は子連れ利用者の姿が目立っていた。

「甘かったなぁ・・・。」

ペラペラと新聞をめくると、何度も「殺人」の大きな見出しが目に入る。
こうした記事が絶えることのない、物騒な世の中だ。

仮に、ミナが実在した人の幽霊だとしたら・・・
ミナはどうやって死んだのだろうか?

そうだ。僕の耳を伝う『声』の多くは悲痛な呻きや叫びだった。
病院、道路、古戦場といった「死」に関わる場所では特に聞きたくない『声』が聞こえる。

だから、僕は病院が苦手。おかげで病気一つしない健康優良児で育った。

もしも、あの路地がミナの死に場所だったとしたら・・・

そんな考えが頭の中をよぎったとき、後ろのほうで聞き覚えのある声がした。

「おう。ハル、勉強か?」
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