【短編】message
「祐介!驚かすなよ!顔がいやらしいぞ」

ニヤニヤ笑いながら話しかけた祐介をたしなめる。

「おいおい、声かけただけじゃん。失礼なお兄ちゃんだな。」

祐介が目線を向けた先には、幼稚園くらいの男の子がいた。

彼の手をしっかりと握り締め、僕のほうを凝視している。

「その子はお前の隠し子か?」

「勘弁してくれ!甥っ子だよ。姉貴が帰省してんだよ。」

「そうかぁ、お前実家暮らしだもんな。」

もっとも、祐介は要領がいいから、コツコツ勉強なんてするタイプじゃない。

「今日は子守り押し付けられた。じゃなきゃ、図書館なんて来ないよ。」

「なぁ、祐介。この辺でさぁ小さい女の子が亡くなった事件なんてなかったか?」

「何だよ?急に言われてもわかんねーよ。」

「だよなぁ・・・。」

僕らが話し込んでいる間に、祐介の甥っ子の注意はすっかり僕から離れて奥の絵本コーナーに向けられていた。

「おい。ほら。」

連れて行ってやれと、それとなく祐介に目配せをする。

「またなぁ。」

二人を見送り、僕は再び新聞との格闘を開始した。


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