【短編】message
―「ハッピーバースデー、春樹。6歳おめでとう!」

父さんと母さんは満面の笑みで僕を囲む。

薄明かりの中、目の前に置かれた、僕の顔よりも大きなケーキ。

六つの明かりが灯されたロウソクを一気に吹き消すと、
パチパチとまばらな拍手とともに、部屋は真っ暗闇に変わった。

『はるちゃん…大きくなってね。』

「おばあちゃん?」

聞き覚えのあるその優しい声に僕は思わず立ち上がる。

パチッと電灯がつけられた。

父さんと母さんが不思議そうな顔で僕を見つめていた。

「春樹?今、おばあちゃんて言わなかった?」

「うん。だっておばあちゃんの声が聞こえたんだもん。」

父さんが困った顔をしている。

「おばあちゃんがいるはずないだろ。去年死んじゃったんだから。」

「でも、聞こえたんだ!はるちゃん、大きくなってねって。」

「春樹!悪ふざけはやめなさい!」

「僕は嘘なんてついてない!」

「ねえ、おばあちゃん?いるよね?」

「春樹!やめなさい!」

僕は嘘なんてついていなかった。おばあちゃん子だった僕が、おばあちゃんの声を聞き間違えるはずがなかった。

怒り出す父さんと、泣き出す母さん。

理解なんてしてもらえるはずがない。僕はとても悔しくて悲しくて、歯を食いしばって泣いた。

楽しいはずの誕生日が、散々な思い出だ。
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