【短編】message
ずいぶん前に大学の友達である祐介に教えてもらっていたが、その道を通るのは初めてだった。

そこはあまり人が通らないらしく、街灯も見当たらなかった。

真昼間なのに少し薄暗いのは、生い茂る木々が光をさえぎっているせいかと思ったが違うようだ。

空気が異常に湿っている。
汗で濡れたTシャツがすっかり肌に吸い付いていた。

そうだ、たいていこういう場所は・・・


『早く帰らなきゃ・・・。怒られちゃう。』

こんな感じに『声』が聞こえるんだ!


小さな女の子の声がした。念のためにあたりを見回すが、やはり僕しかいない。

『見つからないよぉ・・・。』

「悪いけど、僕は急ぐんだ。手伝えなくてごめん。」

僕は彼らの『声』を一方的に聞けるけど、彼らには僕の声は聞こえないらしい。

それでも、僕はなんとなく『声』に応えてしまう。

反応などあるはずのない『声』を背に僕は再び走り出した。

その瞬間だった。

『お兄ちゃん、聞こえるの?』

ゾクッと背筋が凍りついた。
だけど、振り返るわけにはいかず、逃げるように僕は走り去った。

迷子の『声』を残したまま。
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