【短編】message
息をきらし、汗だくで講義室に駆け込むと、教授はまだ来ていないようだった。

「セーフ!」

祐介が僕の席をとって待っていてくれた。

「昨日の酒のせいで寝坊か?それにしても汗臭いぞお前。」

「急いでたんだよ。シャワー浴びる暇なかった。」

「男は身だしなみも大事だぜ。まぁとりあえず早く座れよ。」

そういう祐介の後ろの髪は無造作にはねていた。
相変わらず調子のいい憎めない奴だ。

僕の胸の鼓動はおさまらないまま、教授がのんびりと講義室のドアを開けてご入場してきた。

「それでは、前回の課題の・・・」

「祐介、ノートよろしく。終わったら起こしてくれ。」

「あぁ。わかってる。」

さっきの出来事にまだ少し動揺していた。
会話に応答があったのは初めてだったからだ。

だけど、祐介にそんなこと話しても馬鹿にされるだけだってことくらいはわかっている。

きっと空耳だ。そうに違いない。

疲れ果てていた僕は、教授の第一声とともに机にうつぶせた。

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