【短編】message
「ハル、よく寝てたな。講義3つまるまる睡眠じゃねぇかよ。」

「疲れてたんだよ。今日は早く寝るよ。」

「卓也んちで飲むけど来るか?」

「やめとくよ。テスト前だしなぁ。」

祐介と別れて校舎を出ると空はすっかり茜色に染まっていた。

ペットボトルの緑茶を飲みながら、僕はゆっくりと歩きだした。

夕方になっても涼しくならない。汗で濡れたTシャツは僕にもわかるくらいのすさまじい臭いを発していた。

シャワー浴びなければさすがにまずい。出かけるときは時間がなかったから仕方ないけれど。

しばらく歩くと、近道に使った路地にさしかかった。
相変わらず、薄暗く重い空気をかもしだしているように思った。

―『お兄ちゃん、聞こえるの?』

あの『声』の女の子は、やはり僕に話しかけたのだろうか?
僕の声が聞こえたのだろうか?

あの時は恐怖すら感じたが、ふつふつと疑問が浮かんでくる。
今はどうも興味のほうが勝っているらしい。

僕は進行方向を変え、路地へと一歩踏み出した。
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