同居人の秘密~瞳の魔法に魅せられて~
「じゃあ、私はそろそろ行くわね」


 そう言って春姉が椅子から立ち上がると、


「あー、ちょっと待って」と海さんが春姉を呼び止めた。


「一緒に行こう?」


「はい?」


「会社の車が迎えに来るから、それに乗って一緒に出社しよう?」


「い、いいえ、それは出来ません」


「なぜ?」


「そんな事をしたら目立ってしょうがないし、私は重役出勤というわけには行きません。まして今朝はミーティングがあるから、いつもより早く出社しないといけないんです」


「そうか……」海さんはひどく残念そうな顔をした。


「あ、それと……」


「ん?」


「私の家に引っ越した事、会社では秘密にしてください」


「どうして?」


「変に噂されたり、誤解されると嫌だからです」


「そうか、分かった」


「では、お先に行ってます。副社長」


 がっくりとうな垂れた海さんに、私は「海さん」と声を掛けた。そして「はい?」と言って顔を向けた海さんに向かい、私は拳を握ってガッツポーズをした。

 海さんはポカンとした顔をしていたけど、すぐに意味が分かったみたいで、私にガッツポーズを返してくれた。超素敵な笑顔と共に。


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