あめ玉ふたつとキャラメルひとつ
第1話
「選択教室にお化けがいるの、知ってる?」
「知ってるよ、有名よね。いつも音楽が聞こえるらしいよ。」
お化けなんてあだ名が付けられた私。一日の授業が全て終わり、下校のチャイムが校内に響き渡っている。登校時刻のチャイムに比べると、下校時刻のチャイムはゆっくりと、綺麗な音で響くように思える。この時間の方が、校内の生徒の話し声や笑い声が少ないからだろう。
ここは選択教室。選択教室は全てで三部屋ある。ここは第三選択教室だった。選択教室が使用される場合、第一と第二が優先的に使われる為、この三つ目の部屋は大抵の時間が空き教室となっているのだ。長い廊下の一番北奥の教室で、人が通ることも少なかった。西日が眩しく、オレンジ色のペンキが塗りたくられたように鮮やかに飾られている。こんな広い学校の中に、私だけの部屋があるような気分にもなっていた。
教室に充満する騒がしい空気や、昨日のテレビ番組についての会話、先生の悪口、どれをとってみても得意なものが無かった。
クラスメートと少しの会話をしたこともあるが「変わっているね。」と言われるか、会話が続かないかのどちらかにしか転ばない。
いじめというものに合っているわけではない。聞きたいことがあれば私から話し掛け、クラスメートはごく普通の口調で答えてくれる。私が髪を切ってくれば、感想を言ってくれる女の子も数人いる。班毎に活動することがあっても、特別つま弾きにされた経験も無い。クラスメートに嫌いだと思う人も特にいない。
こうしてひとりでのんびり本を読んだり、ラジカセを鳴らして聞く方が好きだというだけだ。
実のところ、この一番窓側の三列目の机の引き出しには、お気に入りのCDをいつも入れているのだ。誰も使わないし、誰かが使った形跡があっても一枚たりとも盗られたことはない。英語のリスニングに使うラジカセは、いつも教団の下に置いてある。図書室に行けば、本は借り放題だった。こんなに至れり尽くせりな施設は無いだろう。ただそれだけだった。ひとりが好きで、好き勝手にのんびりしていたい。それだけの目的だった。
「知ってるよ、有名よね。いつも音楽が聞こえるらしいよ。」
お化けなんてあだ名が付けられた私。一日の授業が全て終わり、下校のチャイムが校内に響き渡っている。登校時刻のチャイムに比べると、下校時刻のチャイムはゆっくりと、綺麗な音で響くように思える。この時間の方が、校内の生徒の話し声や笑い声が少ないからだろう。
ここは選択教室。選択教室は全てで三部屋ある。ここは第三選択教室だった。選択教室が使用される場合、第一と第二が優先的に使われる為、この三つ目の部屋は大抵の時間が空き教室となっているのだ。長い廊下の一番北奥の教室で、人が通ることも少なかった。西日が眩しく、オレンジ色のペンキが塗りたくられたように鮮やかに飾られている。こんな広い学校の中に、私だけの部屋があるような気分にもなっていた。
教室に充満する騒がしい空気や、昨日のテレビ番組についての会話、先生の悪口、どれをとってみても得意なものが無かった。
クラスメートと少しの会話をしたこともあるが「変わっているね。」と言われるか、会話が続かないかのどちらかにしか転ばない。
いじめというものに合っているわけではない。聞きたいことがあれば私から話し掛け、クラスメートはごく普通の口調で答えてくれる。私が髪を切ってくれば、感想を言ってくれる女の子も数人いる。班毎に活動することがあっても、特別つま弾きにされた経験も無い。クラスメートに嫌いだと思う人も特にいない。
こうしてひとりでのんびり本を読んだり、ラジカセを鳴らして聞く方が好きだというだけだ。
実のところ、この一番窓側の三列目の机の引き出しには、お気に入りのCDをいつも入れているのだ。誰も使わないし、誰かが使った形跡があっても一枚たりとも盗られたことはない。英語のリスニングに使うラジカセは、いつも教団の下に置いてある。図書室に行けば、本は借り放題だった。こんなに至れり尽くせりな施設は無いだろう。ただそれだけだった。ひとりが好きで、好き勝手にのんびりしていたい。それだけの目的だった。