あめ玉ふたつとキャラメルひとつ
それがいつの間にか、私は「お化け」だと思われていた。はじめは、クラスにも馴染もうとせずに勝手に選択教室を占領している私への批判かと思っていた。確かに私は教室にいてもただ座っているだけで、掃除の時間も休み時間も黙っている。授業に出ずにここにいることもある。勝手な行動をしていると思われていると思っていた。
しかし、誰も私に文句を言わないし、会話をすることがあっても嫌な顔をされたことも無い。嫌味をぶつけられたこともないし、先生に注意を受けたことも無い。
ここで過ごし始めて暫くしてから、特に陰口で言っている訳ではないようだと気付いた。
どうやら私は、本当にお化けだと思われているらしかった。誰も居ない教室から音楽が聞こえるという噂が立っているが、それは私がラジカセで音楽を聴いているからだろう。私が座っている後姿を、昔屋上から飛び降りでもした女の子の幽霊とでも思ったのだろうか。最近は後ろ側の出入り口からこちらを覗いて、走って逃げていく気配を感じることもしばしばだった。

だがそんな噂が立とうが、お化けと思われようが、ここが私だけの部屋であればそれで何よりだった。

今日は朝から快晴で、夕日がいつもにも増して眩しい。
一月の終わりの、寒さの厳しい時期であるが、上着を脱いでいても温かかった。
目が痛くなるような眩しさに耐えながら夕日を見ていると、ゆっくりと降下しているのが分かった。
窓から視線を外し、黒板のほうへと目をやる。

黒板の左下に小さく文字が書いてある。
朝から陽の沈みかけた今まで、この部屋に長い時間座っていたが気が付かなかった。
青色のチョークで書かれていたので、目立ちにくかったのだろう。
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