野辺の送り
 そっけなかったのは、私の心臓の鼓動が早鐘のように打ち付けていたからだった。
 
 きっと看護士が彼女に耳打ちしたに違いない。とっさに、そう思った。守秘義務ということを知らないのだろうかと、無性に腹が立った。
なぜなら、私は、数日前の手術で無茶をしでかして、こっぴどく叱られていた。無理だといわれながらも、押し通そうとしたからだ。人の命を預かるものとして、もう少し経験を重ねたかった。

 負けたくない同僚がいた。

 だからといって目の前に無防備に横たわる患者になにをしていいわけでもない。わかってはいたが、私は私をもっと成長させてやりたかった。
私がキリンだとしたら、私の首の長さは、きっと三十センチもないに違いない。
 

 三十センチほどの首の長さのキリンを想像して、ちょっと可笑しかった。


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