野辺の送り
 簡単な人間関係、些細な会話に気を遣いすぎ、毎日くたくただった。

 自分はもう、この仕事は向いていないのじゃないかと心底思った。

 そう思いながら、患者と向き合い、看護士にカルテを渡し、日々私は私を私の中の暗い闇に葬っていた。

 心を閉じ込めた私は、ロボットのように任務を日々こなすだけだった。


 周囲の人間たちも、やがては、私をクールで寡黙な女医だと決め付けた。
 

 それを否定することも面倒だったし、寡黙であるとなれば、余計なお喋りをしなくてすむ。

 愛想がない代わりに腕はいい。

 同僚はもとより、患者や患者の家族にもそれでいいと思った。

 もはや、私の目に映るのは、患者そのものではなかった。

 私は患者と向き合うのではなく、患部のみを見つめ、治癒することに専念する修理屋でしかなかった。

 私の心は、ぱさぱさに乾いていた。

 人の声はもはやぬくもりもなく伝わり、やがて私の声もノイズでしかないような、じゃりじゃりとした世界に私はいた。

 やがてそれもなにも感じなくなり始めていたころ、彼女が私の前に現れたのだった。


      
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