ブラウン管の中の彼女
「覚えてないか。もう10年も前のことだもんね」
10年前?
訳がわからずに首を捻っていると祐ちゃんが助けてくれた。
「灘さんは僕たちと同じ幼稚園だったんだよ」
「そうそう!!よく一緒に遊んでたんだけど覚えてない?」
おんなじ幼稚園?
幼い頃の記憶を探る。
砂場で遊んでるのは…実早と祐ちゃんと――…。
「もしかして…いーちゃん…?」
恐る恐る口に出してみる。
「あったり~♪」
二つ結びの似合う可愛い女の子はすらっと手足の伸びた少女に変化していた。
「久し振り、みーちゃん」
ニコッと笑う顔には確かに面影が残っていた。
「依夜(いよ)!!お前、思いっきり蹴っただろ!?」
「当たり前じゃない。バカにはこれくらいの刺激がないと効かないからね」
ため息をついたいーちゃんは太一のほっぺたを抓った。