ブラウン管の中の彼女
「祐ちゃん…」
声をかけると祐ちゃんがこちらを振り返った。
「実早ちゃんもう話はいいの…?」
「うん」
教室には実早と祐ちゃんしかいなくて開いた窓から風が吹いていた。
肌を撫でる風と夕日が辺りを包み込む。
まるで世界は祐ちゃんと実早しかいないようなそんな錯覚に陥る。
「好き―…」
何度言ったって足りない。
「祐ちゃんが好き―…」
やっぱりこの世界には祐ちゃんと実早しかいない。
だって祐ちゃんしか見えないもん。
「祐ちゃんは実早のことが好き…?」
逆光で祐ちゃんの表情は読み取れない。
それでもゆっくりと近づいてくるのがわかる。
グイッ!!
腕を引かれたと認識した瞬間にはすっぽりと祐ちゃんの胸の中に納まっていた。