ブラウン管の中の彼女


僕は樺摘さんの言うことが信じられなかった。


「どういうことですか…?」


「そのままの意味だ。実早と今すぐ別れろ」


平然と言い放つ樺摘さんには僕にない余裕があった。


「嫌です」


僕はキッチンからリビングへと場所を移し、きっぱりと告げた。


「俺に逆らうのか?」


「まず理由がわかりません」


樺摘さんの前に立つとしたから冷めた目で睨まれた。


「理由?そんなの簡単だ。俺は実早が嫌いだからだよ」


……誤魔化されている。


「叔父さんっ!!」


樺摘さんはソファーから立ち上がり玄関へと向かう。


「祐一郎、お前もガキじゃないんだ。いつまでも実早と仲良しこよしでいられると思うな」


その言葉は僕の胸に深く突き刺さった。


「飯はおいとけ。でかけてくる」


パタンと扉の閉まる音がした。


僕はその場からしばらく動くことが出来なかった――…。


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